その先は、考えるのが怖い。
だから、その考えを振り払おうとして、私は強引に一樹さんの手を引っ張った。
千紘
「すぐそこくらいなら、大丈夫ですよね」
自分の声が、すがるように聞こえる。
一樹さんを渾身の力を込めて引っ張り、玄関へと連れて行く。
けれど、一歩出ようとしたところで、金属音が聞こえたのだ。
一樹
「ぐっ」
一樹さんが一瞬前のめりになる。
千紘
「えっ」
その音に驚いて、鳴った場所を見下ろした。
千紘
「なっ!?」
千紘
(どういうこと!?)
そこには、がっちりと足かせがはまった一樹さんの足首があった。
私は息を飲んで、大きく目を見開く。声も出ないとは、このことだろう。
一樹
「ぐっ」
つんのめるようにして、一樹さんが膝をつく。
がつっと膝が床を激しく打つ音。
それだけ、全力で前へ体重が移動したようだ。
千紘
(私が引っ張ったせいで)
足かせも気になるけれど、一樹さんが怪我をしてないかも心配だ。
千紘
「大丈夫ですか?ごめんなさい」
私もしゃがみこむと、一樹さんの顔を覗き込んだ。
額に脂汗が浮いている。かすかに震える肩。
千紘
(どうして、こうなっているの?わけわかんないよ)
一樹
「とにかく、戻りましょう」
千紘
「は、はい」