その先を考えながら、私は体力が限界にきていた。
ことんっと、一樹さんの肩に頭を乗せてしまう。
一樹
「ッ」
一瞬、ぴくんと一樹さんの肩が揺れた。
けれど、そのまま読み聞かせを続けてくれるから、私もそのまま……。
千紘
(だって気持ちよくて……離れたくない)
眠たくて体がだるいせいもあったのか、
私は頭をもたれかけさせたまま、体から力を抜いた。
一樹
「そして、庭の淡雪は、静かに解けていきました」
一樹さんの声が、肩越しに伝わってくる。
熱も息遣いも、すぐそこにあって、それに安堵を感じた。
千紘
(このまま、眠ってしまえればいいな)
まだうとうとしながら、私はそう願っている。
一樹さんは、私の体が落ちないように、微妙に位置を調整してくれていた。
気遣ってくれる優しさに、胸があたたかくなる。
一樹
「ええと……千紘さん?」
読み聞かせが終わっても、私はまぶたを開ける気になれない。
千紘
(この時間が、ずっと続けばいいのに……)
そう思ったとき――。
一樹
「このまま、しばらく……」
同じ願いを、一樹さんも口にする。
一樹
「私に、あなたの眠りを守らせてください」
呟かれた言葉が、胸に沁み渡った。
そっと背中にまわされた一樹さんの腕の感触が、
翌日まで残っていたのは内緒だ。