葵
「嬉しかったな」
千紘
「なにがですか?」
葵
「千紘が、独占欲を見せてくれたから」
その言葉に、ばっと顔が熱く火照りあがった。
千紘
「あれは……独占欲……なんですか?」
葵
「そうだろ? オレを自分のものにしたかったんだもん」
千紘
「でも、それは司書として、いけないことです」
葵
「司書としては、そうだけど……。女の子としては、いいだろ?
とりあえず、オレはうれしい」
すごくそばに顔を寄せられ、耳元でささやかれる。
熱を感じる距離に、ドキドキしてきた。
千紘
(なんだか、いつもより積極的な気が……)
葵
「千紘、よく聞いて」
熱く切なげに名前を呼ばれれば、今にも身を寄せてしまいそうになる。
葵
「オレは、ずっと千紘のそばにいても別にいいんだよ」
どこか拗ねたような声に、はっと胸を突かれる。
千紘
「えっ」
葵
「ほかの誰かに借りられなくてもいいんだ。君だけを、見ていたい」
千紘
「だけど、たくさんの人に読まれたいって」
葵
「それは、千紘がいなかったらの話だ」
千紘
(どういうこと?)