目を瞠る私には構わずに、樒さんは私の手を取った。
樒
「こっちの手はソファ……におろして、逆の手を……添えて」
千紘
「は、はいっ」
言われるまま、なされるがままに、ポーズを取る。
樒
「ああ、それじゃあ、手の位置が上すぎ……だ。ここ……くらいだ」
言いながら、腕を持たれ、今置いていたよりも少し下の位置におろすように促される。
千紘
(樒さんがつかんだところだけ、とっても熱い)
ひどくドキドキして、きっと顔も赤くなってるはず。
握られたところから、肌のざわめきが伝わって、体中に広がっていく。
千紘
(どうしよう。恥ずかしすぎて……)
ふわりと絵の具の匂いが強くなった。
樒
「どう……した?」
千紘
「……っ!」
見上げる上目遣いの視線とぶつかる。澄んだ瞳はまっすぐに私を捉えている。
息が止まりそうなくらい、胸が痛い。
千紘
「あ、あの……こうですよね」
ドキドキしすぎて、どうにかなってしまいそう。
早く、このポージングが終わることを願うばかり。
樒
「まあ、いい……かな?」
千紘
(相手が、樒さんだから……こんなに苦しいの? これが続いたら、私の心臓が持たないよ)
樒
「そのままで」
千紘
「はい。このまま」