千紘
「莉玖くん……噛んだの?」
自分の小指に、はっきりと噛み跡が残っている。
小指がずきずきとした痛みを訴え出した。
莉玖
「そうだよ。だって眠ろうとするんだもん。もう、だめだなあ。千紘ちゃんは」
白い歯を見せて、にっこりと笑う莉玖くん。
千紘
「そうだね。私、だめで。いつも莉玖くんに面倒をかけちゃうね」
莉玖
「いいよ。これくらい。でも眠らないで。
そうでないと、またボク、噛みつかないといけないから」
千紘
「うん、わかった」
私も、微笑み返す。
まだ、しびれるような痛みはあるけれど、それが莉玖くんの言葉で、甘い疼きにかわっていく。
それが快感につながっていくようで、不思議だった。
千紘
(だって、この傷は、莉玖くんが私のためを思ってつけてくれたもの。
だからこれは、大事に思われている証拠だもの……)
私は、そっと傷のある手を頬に持っていった。
そして、そっと頬ずりをする。
莉玖
「ふふっ」
そんな私を、莉玖くんは嬉しそうに目を細めて見守っていた。