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最終回。
第8回:その壱がはじまります。
 
今日は退魔師の兄ちゃんと
お坊ちゃんがゲストにゃ!!
 
第8回:その壱





こちらでは初めまして。
私は虚空。伊織の血脈に宿る護法童子です。
ほら、愁。貴方も挨拶なさい。
 
ああ、初めまして。
 
それだけなのですか?
もっと色々あるでしょう。
 
いや、特には。
こういうのは虚空の方が向いているだろう。
だから、任せた。
 
ああ、もう!!
すぐに私に押し付ける……
 
……こほん。
この愛想のない黒いのが私の現在の主である
愁こと伊織愁一郎です。
 
今までの私の主の中で最も早く峰入りし、
将来を期待される退魔師なのですが……
権勢欲など持ち合わせていない、周囲に無関心な性格
ですから一介の退魔師として紫紋に所属しています。
 
愁と私は任務で伊那砂郷に参りました。
あの子たちとは思わぬ再会をすることになりましたが……
まあそれは今語らずともよいことですね。
 
愁、他に言うことは?
 
(首を横に振っている。
どうやら眠たいようだ)
 
はぁ……
 
私たちからは以上です。
郷の方、進行をお願いします。
 
 
りょ、了解にゃ。
でもね、ここ、コラムコーナーですから
自己紹介してくれなくても大丈夫なりよ?
ですが、ここで私たちのことを初めて知る方も
もしかしたらいるかも知れませんし、やはり挨拶は
しっかりしておかねばなりません。
 
 
虚空さんは真面目な方ですね。
いつもズルしてサボることばっかり考えている姉さん、
ちょっと生き方について説法いただいてはいかがですか?
 
にゃー都合の悪いことは何も聞かないにゃー。
退魔師の兄ちゃん、眠そうだけど質問に答えてくれる?
(頷いた後、虚空の肩を叩いた。
寝ていても虚空が答えると言っているようだ)
 
コレは気にせず、始めましょう。
大分長い前座となってしまいましたしね。
 
 
兄ちゃんたちにはたくさん質問がきてるからにゃー。
ちゃっちゃか行くぜ!
 
“愁一郎さんはどれくらいだらしないんですか?”
zzz〜
 
 
…………
 
…………
成人男子が持ち合わせる生活能力と一般常識が
大分欠如してます。世間知らずでズボラ、とても
手のかかる子です。
 
 
とても手のかかる子、ですか。
ええ。あまり言うと拗ねるので深くは言いませんが。
 
 
ねー突っついても全然起きないよー?
まだお昼なのに熟睡なのはこれいかに?
それは職業柄しかたないことなのです。
怪異やそれを引き起こす妖は夜現れるもの。
それらを退治するものとして昼夜逆転した生活を
送っていますから。
 
 
この郷の妖のように人の時間に合わせて寝起きし、
生活する方が変ですからね。
では次の質問です。
 
“愁ちゃんの好きな女の子のタイプは?”
ほら、愁、起きなさい。
こればっかりは私が答えるわけにはいきませんから。
 
んー……
 
女性の好みを知りたいそうです。
 
……まるくて。
 
 
まるくて?
……甘いけどちょっと苦い。
 
 
にがい??
黒ゴマもある……。
 
 
…………
寝ぼけてますね。
大方プリンの夢でも見ているのでしょう。
 
先ほども申したように愁は周囲に関心のない性格です。
年も年ですからそれなりに人生経験は積んでいますが
自分から気にかける女性はたった一人だけ。
 
好み、好みでないの話とはずれてしまいましたが
この質問に対する答えはこれでよろしいでしょうか?
 
 
えーダメだよーちゃんと兄ちゃん起こして、
きこ――み゛ゃ゛!?
 
それで結構です。
虚空さん、ありがとうございました。
いえ。
 
 
んじゃ、お坊ちゃんの好みのタイプを教えて欲しいにゃ。
せめてそれくらいの情報は出さなきゃネコはうすの名が
廃るんだぜ!
 
で、どうなの?
うりうり、おねえさんに教えてにゃー。
困りましたね。私は童子。
童姿のまま、伊織の血脈が絶えぬ限り生きるものです。
ゆえにいくら中身が老成しようと女性と婚姻を結ぶことは
出来ません。
 
 
永遠の中学生とかそんな感じ?
 
あの、結婚したい女性ではなく、
人物として好ましいタイプもないんですか?
ああ、そちらでしたら答えれそうです。
ずばり、料理が上手で健勝で愁のことが好きで
愁も憎からず思っている女性でしたら私は好きです。
 
 
料理が上手……
 
愁一郎さんも好きな女性……
あれ? ……何か見当違いなことを言ってしまいましたか?
 
 
だいぶ限定されました。ありがとうございます。
え? え??
 
 
それから退魔師の兄ちゃんが一番というのもわかりました。
そ、それは当たり前です!
私は護法童子。
主なくしては顕現することはかないませんから。
 
 
意外と絆が深い主従なのですね。
主を使い走りにしてるからそうでもないと
思っていたんですけど。
 
じゃそろそろ次行くにゃ。
し、愁、起きなさい!!
次の質問には貴方自身で答えるのですよ。
 
わかった……ふわぁ……
 
 
“愁一郎さんと東雲さんの出会いについて教えてください”
断る。
 
即答しましたね。
 
じゃあ、オレが語ろう!!
 
 
あ、あなたは!!??
2008年上半期ベストメガニスト選考落ち、東雲霖でーす♥
 
愁ちゃん、ダメだよ。
もっとサービス精神を持たなきゃ!
 
煙草、吸ってきていいか?
 
無視はいやんっ!
 
 
どこから沸いた???
気にしなーい気にしなーい!
 
で、愁ちゃんとオレの運命の出会いについて
話せばいいのかな?
いいよーじゃんじゃか喋っちゃいましょう♥
 
此処にいた方が良いのでは?
思い出、捏造されますよ。
 
………………わかった。
 
あれは愁ちゃんが高校生の時だったね。
突然の雨に困っている愁ちゃんに
オレがそっと傘を差し出し――
 
2秒でバレるウソをつくな。
 
えー違ったっけ?
あ、そうだそうだ、こっちだった。
 
ショーウィンドウ越しにトランペットを眺めている
高校生の愁ちゃんと――
 
喋れなくなるように口に何か詰め込んでやろうか?
 
あれーこれもお気に召さない?
じゃあ、お家に帰れなくて途方にくれてる愁ちゃんに――
 
なっ……
 
伊織の家はあっちだよーって教えた
素敵なメガネガイが――
 
待て、それ以上喋るな。
 
ま、愁ちゃんが帰りたかったのは伊織の家じゃ
なかったけどね。それはいっか。
 
ふふ〜ん♪ あの頃の愁ちゃんは可愛かったなぁ。
あ、でも今とそんなに中身は変わってないか。
この前もさぁ……
 
それ以上喋ったら斬るぞ。
 
命がけで愁ちゃんの嫌がる顔を見るのが
オレの趣味だからね。
望むところさ!
 
もう終わろう。
話を続けていたら惨劇を起こしてしまいそうだ。
 
 
ら、らじゃあ!
言うこと聞かなかったらお前もゴートゥヘルな! って
顔に書いてあるぜ……
 
今回は2本立てですし、この辺で切り上げましょう。
愁一郎さん、虚空さん、眼鏡さんありがとございました。
 
その2に続くにゃ!!


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第8回:その壱