『あさき、ゆめみし』トップへ
 
ギャラリートップへ戻る
 
前へ
CG
  
次へ
 
― 黄昏時、東雲と ―

【霖】
 「おや、雨が降り出したみたいだよ」

雨音が耳に心地いい。
つい、うとうととしてしまう。

【霖】
 「でも、通り雨だ。空は明るい」

【沙耶】
 「狐の嫁入り、ですっけ? ふぁ……」

【霖】
 「姫さん? 眠いの?」

【沙耶】
 「はい、ちょっとだけ……」

【霖】
 「少し休んでいくかい?」

【沙耶】
 「じゃあお言葉に甘えて……」

ころんと寝転がって、頭を東雲さんの太腿の上に乗せる。
驚いた表情の東雲さんと目が合う。

【沙耶】
 「えへへ……」

【霖】
 「ちょ、姫さんっ」

【沙耶】
 「ダメですか?」

【霖】
 「ダメじゃないけど……」

はあ、と大きなため息。
見上げた頬がほんのり赤い。

【霖】
 「ねえ、姫さん……オレ、こういう不意打ちに弱いって知ってた?」

【沙耶】
 「さあ? 知りません」

【霖】
 「こら。嘘はダメだよ」

ちっとも怒っていない、優しい声でわたしをたしなめる。
眼鏡の奥の瞳も穏やかに細められていて、
目が合うだけで心臓の鼓動が早くなったような気がした。

【沙耶】
 「手、握ってもらってもいいですか?」

【霖】
 「ああ、いいよ。これでいいかい?」

指が絡み合う。

【霖】
 「いつもこうしていたいね」

やわらかに降る雨のように、胸に東雲さんの言葉が染みこんでいく。

【沙耶】
 「――東雲さん、大好きです」

そっと目蓋を閉じる。
眠っているときでも東雲さんと触れ合っていたい。
繋がりを感じていたい。

そうでないと、このひとはすぐにどこかへ消えてしまいそうだから。