愁一郎「沙耶!」
呼び声に顔を上げると、ふもとの方から
あわてた様子の愁ちゃんが
駆け上ってきているところだった。
沙耶「愁ちゃん!」
愁一郎「!? 高虎、お前もいたのか?」
沙耶「いたのか じゃなくて、
わたし、高虎くんに助けてもらったんだよ!」
愁一郎「そうか、それはすまなかったな、高虎」
高虎「いえいえ、けど愁さん、
お礼を言う気があるのなら、
利剣の鯉口を切るの、やめていただけませんか?」
愁一郎「ああ、そういえばそうだな」
……って、愁ちゃん。
どうしてそんなに臨戦態勢……!
愁一郎「……ふう」
沙耶「どうしたの? 愁ちゃん」
愁一郎「いや、もちろん、瑠狼は危険だが……
こいつも十分危険だと思ってな、別の意味で!」
沙耶「こいつって、高虎くん?」
愁一郎「沙耶、まさかこいつに
何かされなかっただろうな?」
高虎「やだなあ、愁さん。
若さへの嫉妬はみっともないですよ」
愁一郎「高虎、俺達、一度じっくり
話しあった方がいい気がするんだが……」
沙耶「ちょ……ちょっと愁ちゃん、落ち着いて!
ないから!何もないから!
高虎くんも意味もなく、
愁ちゃん挑発しないでよ!」