女性向け伝奇アドベンチャー 『神足町人妖譚 ~迷イ子ノ章~』

澪(MIO)
神足町人妖譚
画廊|神足町人妖譚 迷イ子ノ章

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千世
「どうして」

翠
「ん?」

千世
「どうして、そんなにつらそうに笑うんですか?」

翠
「そんな顔してた? つらい。つらいか……」

翠
「そんな顔しないで。俺より君の方がよっぽど
 つらそうな顔しているよ」

手が伸びてきて、少し冷たい指が頬に触れる。

翠
「俺を想って悲しまないで」

翡翠の瞳は真っ直ぐに私を見つめて。

翠
「俺のために泣いてくれるより、
 俺のために笑ってくれる方が嬉しいな」

翠
「……勝手なこと言ってごめん」

頬から指が離れる。

千世
「っ――」

その指をとっさに掴んでいた。

千世
(何か、言わなきゃ……でも、言葉が浮かばない)

翠
「……こんな風に手を握り合ったことがあったね」

静かな声に、記憶が呼び覚まされる。

それは、遠い昔のこと。
初めて翠に出会った日の――。